DV(ドメスティックバイオレンス)は精神的負担も大きく、暴力や暴言が日常化すれば抵抗する気持ちさえ失せます。最終的には「どうしようもない」と諦めてしまいがちですが、子供や親、ペットにまで危害が及んだらどうしますか?
少しでもDV被害を終わらせたいと思ったなら、解決策の1つとして「法律」に守ってもらうべきです。
逮捕や損害賠償請求など、法的制裁も辞さない覚悟でDV被害と向き合いましょう。
DV夫と戦うための準備
まずは「目標」を決めてください。一時的に別居できれば良いのか、離婚を考えているのか、裁判で争うつもりなのか、罪を償ってほしいのかなど。そして、今頭の中に描いた目標を達成するため、次のような準備をしましょう。
犯罪ではない個人間のトラブル(民事事件)に対して、警察は積極的に立ち入ろうとしません。
これを民事不介入の原則と呼び、長年、DV被害者を悩ませてきました。
ところがDVによる健康障害や精神障害、警察への相談件数の増加などから、平成13年に被害者を守る法律が誕生したのです。それが「DV防止法」です。
DV防止法とは
正式名称は「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」です。
配偶者からの暴力は人権侵害であり、男女平等を実現するために国及び地方公共団体は
- 「配偶者からの暴力防止」
- 「被害者の保護」
- 「被害者の自立支援」
これは国の基本方針となりますので、市区町村でも同じように計画を勘案して、DV問題に取り組まなければいけません。
その1つが、相談支援センターや保護施設の設置です。
DVで困っている女性が気軽に相談でき、身の危険を感じれば逃げられる場所を提供しています。
保護施設の利用は、被害者の同伴する家族も対象となるため、基準を満たせばお子さんとの入所も可能です。
福祉事務所でも自立支援に向けた対応を行っています。
そしてDVを受けている被害者を発見したら、配偶者暴力相談支援センター又は警察官に通報するよう努めなければいけません。医師や医療関係者も通報義務の対象ですが、被害者の意志を尊重しなければいけない立場なので、同意を得なければ勝手に通報されることもありません。
またDV被害の防止に向けて、
警察官も
- 「暴力の制止」
- 「被害者の保護」
- 「暴力被害の発生防止」
In short 個人間トラブルであってもDV被害者を守るため、警察官や警察本部長が動いてくれるのです。
一昔前とは警察の対応も変わっているため、「警察は役に立たない」と諦めずに相談・通報すべきでしょう。
さて、DV防止法の最大の特徴が「保護命令」となります。
裁判所に申し立てを行うと、DV加害者に対して禁止命令や退去命令が言い渡されるのです。以上がDV防止法の要点となります。
DV被害者を守る12の保護命令
配偶者等からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた場合には、申し立てすることで次のような保護命令が裁判所から発令されます。
加害者が保護命令に違反すると、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられるのです。
接近禁止命令(効力は6ヶ月間)
- 1、被害者へのつきまとい行為、住居や勤務先などの徘徊を禁止する。【10条1項1号】
- 2、被害者に同居の子(未成年)がいる場合、その子に対してもつきまとい行為や学校付近の徘徊を禁止する。子の年齢が15歳以上の時は、子の同意が必要である。【10条3項】
- 3、被害者の親族へのつきまとい行為、住居や勤務先などの徘徊を禁止する。【10条4項】
※同居の子や親族がいれば、1の被害者への接近禁止命令と併せて2・3は発令されます。
退去命令(効力は2ヶ月間)
被害者と加害者の生活拠点が同一である場合、加害者はその住居から退去しなければいけない。住居付近の徘徊も禁止となる。【10条1項2号】
その他の禁止命令
- 面会の要求
- 行動の監視をにおわせたり、監視可能な状態を作ること
- 著しく粗野又は乱暴な言動をすること
- 無言電話や緊急時を除く連続しての電話、ファクシミリ、電子メールの送信
- 緊急時ではない夜間(22時から6時)の電話、ファクシミリ、電子メールの送信
- 汚物や動物の死体、著しく不快又は嫌悪の情を催させる物の送付
- 名誉を害する事項を告げること
- 性的羞恥心を害する事項を告げたり、関係する文書や図画を送付すること
私も保護の対象者?
平成13年にDV防止法は誕生したわけですが、当初は「配偶者」「元配偶者」「事実婚の恋人」が保護命令の対象者でした。
BUT 平成16年と平成19年、平成25年に法改正が行われ、保護命令の対象者は「生活の本拠を共にする交際相手からの暴力の被害者」にまで広がったのです。
In short 婚姻関係を結んでいないカップルでも「同居」していればDV防止法の対象者となります。DVを受けているが同居していない場合は、傷害罪や暴行罪、ストーカー規制法などの法律に頼り問題を解決しましょう。
DV防止法が誕生してからは、警察も夫婦・恋人間の暴力問題に前向きな姿勢を見せています。繰り返し暴力を振るわれていると分かれば、逮捕状を持った警察官が自宅を訪れることもあります。
緊急逮捕は難しくても、通報によりDV加害者がその場で身柄拘束されるなど、警察の積極的な対応にも期待できます。
ただし、夫婦・恋人間のトラブルは何が真実か分かりづらく、相手を騙すためにDV防止法や警察を利用する人も少なからずいます。
そのため逮捕や裁判所判決、保護命令を検討しているなら、DV被害の証拠を集めておくようにしましょう。
口頭説明だけでは不起訴となり、加害者は戻ってきてしまうかもしれません。
1、相談センターに問い合わせる
民間団体や市区町村が運営しており、ネット上で「地域名 DV相談」と検索すれば簡単に見つけられます。
担当者に悩みを打ち明けると、被害状況やDV期間、生活環境、金銭的事情などからアドバイスを貰えます。
問い合わせた内容は記録に残るため、裁判時には証拠として活用できます。
また、DVに関する専門機関ですので、相談後に担当者が夫と接触するような心配もありません。
誰かに悩みを打ち明ければ、それだけで気分は晴れるはずです。問い合わせるだけなので、今すぐ連絡してみるべきです。
2、危機的状況であれば警察に110番通報をする
DV夫と戦おうと思っている時点で、被害は深刻かもしれません。
そのため、身の危険を感じたらすぐに警察に通報してください。
最寄りの交番に助けを求めたり、生活安全課のDV担当者に頼っても良いです。
この段階では積極的に助けてはくれないでしょうが、警察と接触した場合も記録が残ります。
DVの証拠にも使えますし、過去の記録から被害届が受理されやすくなるでしょう。
昨今、DV関係の事件が増えているので、別居中の夫が自宅周辺をうろついていれば事情を説明してください。状況次第では、警察官が近隣パトロールを実施してくれます。
3、客観的証拠を探偵に集めてもらう
証拠が無ければ、警察や裁判所も解決に向けて動いてはくれません。
口頭説明では、どうしても信憑性が低いからです。
In short DV夫と戦うためには「証拠」が絶対的に必要となります。
ご自身で証拠を集めることもできますが、客観的証拠と呼べる資料を作るには苦労するでしょう。
そこで、探偵事務所の内偵サービス(DV調査)がおすすめです。
DV調査が始まると、自宅に録音・撮影機材が設置されます。
調査終了後には記録をまとめた報告書が作られるので、探偵に任せておけば客観的証拠が手に入ります。
※注意点
基本的には、友人や知人、親族といった周囲を巻き込まないよう準備を進めてください。
相手のためではなく、自分のためにです。
なぜなら、事実確認のため夫と話をしたり、DV被害を周囲にバラしたり、義理の親が出てきてしまったり、仲介役を務めて問題を複雑化するなどが考えられるからです。
DV夫と戦う方法
客観的証拠を保有していれば、行政機関を動かすことも弁護士に依頼も可能です。状況に応じて、DV夫と戦っていきましょう。
逮捕してもらう
まずは警察に被害届を出します。
被害届とは、犯罪被害を受けたことを知らせる書類です。
告訴状と呼ばれるものもありますが、こちらは捜査開始だけでなく処罰まで求める書類なので、証拠が揃っていても受理されないケースが多いです。
さて、警察署に行けば被害届の書類が置いてありますので、被害届を提出する予定なら身分証と印鑑、証拠を持っていきましょう。
被害届が受理されると捜査が始まります。
誰が加害者かは判明しているので、受理されたら夫はすぐに警察から呼び出しを受け、身柄拘束(取り調べ)となります。
その後、検察への送検、勾留、基礎、起訴後拘留、刑事裁判と進んでいき、裁判で有罪・無罪の判決が下ります。
弁護士に法的手続きを依頼する
離婚や損害賠償請求を考えているなら、法律のプロ・弁護士に頼りましょう。
離婚したいと夫に伝えても拒否される可能性が高いため、DV被害者の離婚は「協議離婚(話し合いで決定)」「調停離婚(家庭裁判所の仲介)」「裁判離婚(裁判所からの判決)」となりがちです。
また損害賠償を請求する時には、進め方や手続き、適正金額の算出方法も分からないと思います。
弁護士に依頼すると、各々の仲介作業を請け負ってくれるので、慰謝料や離婚後の生活費についても解決できます。
そして、被害届を提出する時は弁護士に1度相談しましょう。
なぜなら身柄拘束は72時間以内と決められており、証拠不足だと夫はすぐに帰ってきてしまうからです。
事前に弁護士と話し合っておけば、釈放によるトラブルも回避できるでしょう。
新たに被害を受けたら即通報
被害届を出そう、弁護士を雇おうと決めた直後に暴力を振るわれるケースもあります。
この時は、すぐ警察に通報してください。
自宅に駆け付けた警察官が、怪我を負った姿や室内の様子を見て、その場で夫を緊急逮捕してくれるかもしれません。
ただし、家庭内の問題を積極的に解決しようとする警察官は少ないため、期待のし過ぎは禁物です。
DV夫に内緒で弁護士を雇う
必要書類の入手や記入、手続きの流れ把握など、不慣れな作業には膨大な時間がかかります。
弁護士を雇えば、目標に向けて担当者が動いてくれますので、夫にバレることなく手続きを進められます。
そして、弁護士を雇う最大のメリットが「代理交渉」です。
For Example 、DV夫と離婚について話し合える女性はどれくらいいるでしょうか?怖くて目を合わせられない、提案したら暴力を振るわれたでは一向に離婚できません。
協議離婚や慰謝料請求、裁判など、弁護士を雇うと「あなたの代わり」に夫との交渉を進めてくれます。
夫と会わずに済めば、あなたも意見や要求を訴えやすいはずです。
弁護士によって得意分野があるため、目標を決めてから専門の弁護士に相談してください。
初回相談無料の弁護士事務所なら、お金の心配をせず問い合わせが出来るでしょう。
DV夫と戦うために探偵を雇う
探偵を雇えば、客観的証拠が集めることができます。
素人では何が証拠となり得るのか分かりづらいですし、重要な証拠を破棄・見落としてしまう可能性もあります。
事前に雇った理由を探偵に伝えておけば、弁護士や裁判所などに提出できる調査報告書を作成してくれので、その後の手続きもスムーズに行えるでしょう。
またDV調査に申し込むと、探偵事務所ごとのオプションサービスを利用できます。
女性スタッフが対応してくれたり、精神的負担を取り除くためのカウンセリングが受けられたり、緊急時の避難先を用意してくれたりします。
弁護士在中、弁護士事務所と提携、弁護士が運営している探偵事務所では、法的措置のサポートまでDV調査に含まれているのです。
探偵事務所の相談料は、契約を結ばなければ基本無料です。
電話相談が難しければメール相談も受け付けており、24時間365日対応の営業所が多いです。DV問題を解決するには、まずは「証拠」が必要となります。
弁護士に頼る時も同じことを言われますので、不安に思うことがあれば1度相談してみてください。
DV問題 DV夫 まとめ
DV問題で悩んでいるなら、今日から証拠集めを始めてください。怪我の写真や通院記録、日付記載の日記を書き始めるなどが有効です。
DVが悪化しており緊急性が高ければ、DV問題に強い探偵事務所や弁護士事務所に頼るべきです。暴力や暴言の頻度によっては、1週間で探偵の調査は終わります。
その後は、警察に被害届を出すべきか、弁護士に法的手続きを依頼するか選びましょう。
目標すら決められない人は、探偵や弁護士に悩みを打ち明けると解決の糸口が見えるかもしれません。